冬の王様、大福引き会に臨む前
ブレイディ青年は4月の大福引き会に小指がかかった
今にも崖から落ちそうなギリギリの状況だが望みはつながった
この大福引き会は人生を決める大勝負
それは選ぶ側、選ばれる側問わず、不確定な未来と現実との交差点
実に奇妙で数奇な選択の時だ
さらにこの大福引き会は他の福引きとは全く別世界のもの
大福引き会の説明なしでは話は進められない
まず、この大福引き会は福引き会当日の当たりと未来の当たりが大きく異なる
当日の大当たりくじが将来大外れくじにすり替わることはザラだ
未来の大当たりくじも時の運命と時代によって外れくじのまま埋もれていくこともある
そんな難しい大福引き会はこの世に多くない
そしてこの大福引き会が最も異彩を放っていることは当日の大当たりくじから順番に無くなっていくことだ
つまり、1等から順番に2等、3等という具合に無くなっていく
一番初めに福引きを引くものはもれなく当日の1等を引くことになる
…いや…1等を選ぶことができるという表現の方がふさわしいだろう…
但し、その選んだ1等が大外れであることも多くある
だからこそ1等を引く際のプレッシャーは並み外れている
大外れの1等を引いたものは末代まで中傷にさらされ恥を背負うことになる
そんなプレッシャーとも隣り合わせになりながら毎年1等から順番に250等ほどの福引きが行われる
そして、当日の大当たりを未来の大外れくじとしたものは未来永劫また違った意味で伝説として語り継がれる
選ぶ側、選ばれる側ともに試される選択の時が大福引き会なのだ
ブレイディ青年はそんな大福引き会の福引きの玉にとりあえずは入れてもらうことは叶った
怪しげな紺色の男にもらった大福引き会参加補助権をもらったブレイディ青年はその後自らを追い込み研鑽を重ねた
ブレイディ青年は自分が選ばれる価値はあると思えるぐらいに自信を持って大福引き会に臨める自負を手にしていた
後の大福引き会当日に起こる悲劇はこの時、ブレイディ青年は知る由もない…
もっとも、この悲劇がブレイディ青年の原動力となり伝説の始まりになるのだが…
それはまだまだ先の話…
運命とは時に残酷で時に慈愛に満ちたものだ
ブレイディ青年の茨の道はまだ始まったばかりだった…